4-4 模型で考える

プランが出来ていないのにもう模型?と思いましたか。

そうです、プランを「模型で考える」のです。
住宅は、幅・奥行き・高さを持つ立体です。当たり前のことですが、そのため、紙の上だけで検討するよりも模型を作りながら検討する方が、より多くのことがわかります。アイデアも浮かびます。

さて、模型といってもいろいろあるのです。

より効果的な検討のための模型には、まずキタナイものから始めましょう。

 ①ボリウム模型
  敷地に対する大きさを確認するための模型です。キレイに作る必要はありません。もちろん敷地模型も一緒に作ります。

 ②エスキス模型
  大きさのほかにプロポーションを確認したり、各室の大きさやつながりを検討するための模型です。
  これもキレイに作る必要はありません。できるだけ多く作って、試すことが重要です。キレイさよりも早さです。
  厚みのある紙やスチレンボードにスケッチしたものを貼り付けてそれを切り抜くだでいいのです。床に厚みがあるだけでも違ってみえませんか?
  そのキタナイ模型を切ったり貼ったりしていじめてみましょう。トレーニングで体をいじめるように、壁を外したり付け替えたり、穴を開けたり
  塞いだりしながら、模型を鍛えてみましょう。
  キタナイ模型は、やがてキレイな模型に育ちます。

 ③コンセプト模型
  住宅の構成やそれがめざしていることを確認したり、伝えるための模型です。
  余計なものをそぎ落として、住宅の骨格(この場合は構造体というのではなく、意図を示すためのもの)だけのシンプルなものとします。

 ④プレゼンテーション模型
  出来上がった計画を人に伝えるための模型です。育った後の模型ですね。これはきれいにつくる必要があります。
  そして、1階の内部を見せる必要がある時は、2階部分を外すのではなく、壁を外す方がきれいに仕上がります(1階と2階がずれて見えることも
  ありません)。

さ、まずはキタナイ模型をつくりましょう。 

2017.06.16

楽勝の設計課題(β版)4.さ、始めましょう

4-3サイトプランのつくり方

1)サイトプランって何?
またもやパソコンやインターネットの話かと思いましたか。

サイトというのはもともと「場所」や「敷地」のことです。したがって、サイトプランは住宅を敷地のどこに配置するかの計画(配置計画)のことをいいます。庭などの外構の計画を含むこともあります。

その住宅がどこに配置されるかによって、住宅の作り方が変わり、住宅の外部との関係にも影響します。
住宅は基本的には住まう人のためのものですが、住む人が満足しても周囲に迷惑をかけるようなことがあってはいけません。できれば、周囲によい影響を与えるのが望ましい。




そのために、敷地調査をしたのでした。


2)サイトプランのつくり方
 ①集団として考える
  敷地の中に建つものと周辺を一緒に考えるということです。

  あなたの住宅が、周囲から受ける影響や、逆に周囲に与えそうな影響について検討しなければなりません。そのためには、周辺に住む人々の立場
  で考えることが必要です。
  少なくとも次のことについて配慮します。

  ・ 日照 採光の妨げになると困ります
  ・ 通風 風が抜けないと心も晴れません
  ・ 景観 あなたの家が場違いなものになって、調和を損なってはいけません
  ・ 眺望 あなたの家の裏側は、後ろの家からの眺めの主役です
  ・ 騒音 あなたの家が騒音源になると迷惑です
  ・ プライバシー あなたの家からよその家をのぞき込むことになると不快です。もちろん、その逆も
  ・ コミニュケーション お隣とそっぽを向いて暮らすのもつまりません






 ②個として考える
  敷地の中のことに集中して考えるということです。

  周りの人が良くてもあなた自身が満足できなければいけません。そのために、あなたの住宅が以下のことを満足させるかどうか検討します。
  ・ 日照 人工照明の下での朝食や昼間も薄暗いリビングルームは好きですか
  ・ 通風 風はとおりますか
  ・ 景観 あなたの家が気に入らないものになってはつまりません
  ・ 眺望 あなたの家からの眺めは楽しめますか
  ・ 騒音 車の音などの騒音は避けられますか
  ・ プライバシー よその家からのぞき込まれたりしませんか
  ・ コミニュケーション お隣や近隣の人と自然に会って挨拶ができるとすてきです。




建物をどこに置くか考えることは、実は建てない部分を何処にするかを考えることでもあります。  
住宅をデザインすることと余白をデザインすることをいっしょに考えましょう。あ、サイト・プランとはデザインしないことをデザインすることなのかもしれません。

順番はともかく、①と②の両方を検討することが大事です。

さ、建てない部分のことに思いを馳せましょう。

2017.06.15

楽勝の設計課題(β版)4.さ、始めましょう

4-2 プログラムのつくり方

1) プログラムって何?
住宅なのにプログラムって思いましたか?

コンピュータのことか、それともコンサートを思い浮かべた人もいるかも知れませんね。
(形態を含めて)その住宅はどんな性格のものかを、ひとまず想定することを言います。
ひとまずと書いたのは、当然ながら、それは途中で変わってもよいからです。

それを仮に決めるために、その住宅ではどんな生活が行われるのか、その住宅であなたがもっとも実現したいことはなにかを書き出してみます。何回も言うようですが、検討するためにはまず材料を眼に見えるようにしなくてはいけません(もちろん、言葉でもスケッチでも、あるいは模型でもかまいません)。そしてその中での優先順位をいくつか決めます(最優先事項はくれぐれも多すぎないように。せいぜい3つくらいから始めるのががいいでしょう)。

気になることを3つばかり、そこからストーリーをつくりましょう。

たとえば、次に示すプランは、
① 簡単な箱でよい(特に日常生活は小さなワンルームで)
② 戸外生活を楽しめること
③ DVDや本の収納スペースがたっぷりあること
といったようなことを考えてつくりました(「夢みる住まい」の第1弾)。



もう少し詳しいことを知りたい方はこちらをどうぞ。

2)プログラムのつくり方
日常の生活のストーリーを描いてみましょう。

もちろん住宅のイメージからでもOKです。

ところであなたは、斬新なアイデアで住宅をデザインしてやろうと意気込んでいませんか。
よろしい。もしそうならば、自分たちの暮らしている環境を見つめ直さなければいけません。

今の生活空間に慣れてしまい、無自覚になっていることはありませんか。革命的なアイデアも、何気ない日常の生活の中にかくれているのです。

たとえば、時間軸に沿ったイベントを思い浮かべるのもいいし、個人の生活と家族の生活を どう営むのかを想像してみるのでもいい。また、日常(ケ)・非日常(ハレ) という視点も有効です。


海を見るためのスペース**

海を見るためのスペース**

水に浮かぶテラス**

そして、見せ場(ハイライト)とわき役を区別*してメリハリを効かせることが大事です。
そのためには、どこにどういった家具・設備を配するのか(しつらい)も大切なポイントです(仏をつくったら魂を入れなくてはいけません)。

さ、日常生活を問い直してみましょう。

* 空間配置のヒエラルキー(主従や上下等序列の関係)を決めるということ
**写真はクリエーターたちの住まいやワークスペース等を集めたサイトFreunde von Freundenから借りたものを加工しました。

2017.06.14

楽勝の設計課題(β版)4.さ、始めましょう

4-1 敷地調査

1) 住宅は敷地の中に建つのです
そこに建つ住宅と周りの環境を分けて考えることはできません。

敷地とそこに建つ住宅は相互に影響し合います。よい眺めがあれば見たくなり,窓を開けます。見たくない景色があれば、閉じたく
なります。

そこで、住宅を計画するためには、まず敷地とその周辺を調べる必要があります。
そうすることで、その敷地にふさわしい住宅のイメージ(あるいはその種)を得ることができます。

どうしていいかわからないというあなた、まず敷地へ出かけましょう。


2)敷地の調べ方
敷地の性格の把握し、分析するためには、まずは次の2つのことをします。




   ①計画地とその周辺を歩き回る。眺める。写真を撮る。
   ②主な寸法を測り、敷地を含む周辺図に周囲の状況、感じたこと等を書き込む。
   さらに余裕があれば、
   ③敷地周辺の歴史を調べましょう。
この他、建ぺい率などの法規制を知る必要がありますが、これはたいてい課題とともに与えられるはずです。






 具体的には、おおむね以下のことについて知る必要があります。
・ 方位:太陽はどちらから昇る、風はどこから吹いてくる
・ 人や車はどちらから入る
・ そこから何が見えるか、どうなっているのか。見たいか見たくないか
・ 人の視線はどっちから。見られたくないか見られてもよいか、それとも見せたいのか
・ 人や車の量。視線でなく、音の問題もあります
・ 町並みの景観。場違いな住宅にしないために
・ 近所の主な施設。駅の存在やお店の種類を知っておくと、住み手の行動が想像できます
・ その土地の歴史。これを知ると、デザインの手がかり(デザイン・モチーフと言ったりします)になります
まだまだたくさんありますが、まずはこのあたりでよしとしましょう。
そして、これらのことは、時間や天候等によっても異なります。できるだけ足を運びましょう。




それから、そこにはどんな住宅が似合いそうか想像して、全体のかたちでも部分的なことでも何でもスケッチしてみましょう。
もちろん、調べる前にイメージがあればそれも描いておきましょう。

さ、敷地を調べに出かけましょう。

2017.05.27

楽勝の設計課題(β版)3.ツールを知ろう

3-3 置き方でも変わります

同じものでも置き方によってもずいぶん違って見えるのは、誰しも経験することです。

たとえば、あなたの机の上に置かれたものたち。たいてい散らかって見えて、うんざりしているのではないでしょうか。白状すれば、僕もそうです。ただ、いつもそうなのはいやですから、片付けようとします。と思っても、ものはなかなか減りません。

その時の秘訣。簡単なことです。何らかの法則性を持ってやればいいのです。たとえば、大きさ、あるいは縦・横のいずれかに合わせて並べればよろしい。

意図、法則性があるのは明快でいいのですが、時にはそれが窮屈で、もうちょっとくだけた軽い感じが欲しいという時があります。

 置き方について、いくつか説明します。






1) 真ん中に置くか、端に寄せるか
中央に置けばまわりはほぼ等価です。端に置けば、四周の性質に差異が生じます。

等価であることはいい面もあるけれど、特徴がないということでもあります。

一方、たとえば、南側を広く取れば、日当たりがよくなりやすいし、前面の隣家の影響を 小さくできます。北側を広く取れるならば(一定の広さが確保できたら)、南の光を受けた木々を眺める庭をつくることができます。

さ、まずは真ん中においてみましょう。そして、ずらしてみて、決めましょう。





2)並べるか、ばらまくか
同じ形のものをいくつか縦横に並べて置く場合*とばらまくのとではどういう違いがあるでしょうか。*縦横同間隔の格子上に配するやり方をグリッドプランニングと言います。

前者は法則性を感じさせて散らかった印象を与えないでしょうし、後者は中心となる軸性がないために文字どおりばらばらな印象を与えるかもしれません。といって、きちんと並べて置く場合とばらまく場合の良し悪しが決まったわけではありません。

前者は、形式的で堅苦しい感じになるかもしれないし、後者は自由でおおらかな印象を与えるかもしれないのです。

性格の違いは良し悪しのことではではありません。

いずれの場合も、全体は法則に従いながら、ちょっとだけ逸脱すると効果的です。

さ、並べ方を試してみましょう。





3)重ねるか、横に置くか
同じものを重ねておくか、横に置くかでも、それの持つ意味や印象は大きく異なります。

当然のことながら、横に置けば水平方向での関係が生じるし、重ねた場合には縦の関係が生れます。とくに、横に置く場合には、くっつけて置くのか離して置くのかということが大きく影響するのです。

さ、距離感を検討しましょう。





4)貫入
3)と似たような操作として、貫入があります。全部でなくて一部が入り込むというイメージです。

たとえば、高さが異なる場合は中二階が生まれ、同じ高さの場合は一部が内部と接し、一部が外部と接するという、いわば曖昧な部分(中間領域と言ったりします)が生じます。

人の生活が必ずしも明確に切り分けられないのと同様に、生活を受け入れる器である住宅もこの中間領域が重要な意味を持つことがあります。

さ、中間領域を意識しましょう。






上の写真*では外の壁が内部に侵入(貫入)しているのが分かります。このことで、内部が外部の一部になったかのように見えるのです。 *house is(設計:横山敦士)

5)揃えるかずらすか
2つのものを揃えて置くとときちんとした印象を与えやすい。しかし、一方で変化に乏しく固い印象になりやすいのです。他方、ずらして置くならば、まとまりは感じさせないかもしれない代わりに、おもしろさや楽しさを与えることがあります。

また、揃え方やずらし方の程度の問題もあります。  

それらのことの扱い方によって、その効果が変わります。はじめは揃えておいて、それからずらしてみるというのがわかりやすいはず。

さ、何度も試して、自分が描いた理想のイメージにたどり着きましょう。




2017.04.25

楽勝の設計課題(β版)3.ツールを知ろう

3-2 スケールとプロポーション


1) 住宅は最後はかたちです—かたちには意味や性格がある
スケール—大きさが変わると役割も意味も変わります
住宅の計画は、寸法や規模が大事です。

小さすぎてはいけないのはもちろんですが、大きすぎてもいけません。小さい箱には座れますが、中に入ることはできません。一方、中に入ることができるほどの大きい箱には座ることができないのは言うまでもありません。また、広すぎる部屋は落ち着きません。狭すぎる部屋は窮屈です。

どの大きさを選ぶかは、あなたがそこでどういう場面が生まれることを望むのか、あるいはどんなふうに感じてもらいたいかで決まります。

さ、観察と経験と想像を働かせましょう。




2)プロポーションも同じです
 同じ面積でも正方形と長方形では、印象や使い方が違います。

少し前に、日本一の住宅の名人と言われた吉村順三は、もっとも居心地がいい部屋は世界中どこでも3間(5.4m)角の正方形だったと言いました。重心(中心)があって落ち着くとい うわけです。

一方、その少し後の時代に住宅論の雄であった黒沢隆は個室は細長い方がいいと言いました。収納がたくさん取りやすいのです。

あるいは、個室とリビングルームがほぼ同じ大きさだったら、個室にいる方がいいと思うかもしれません。それに、同じ大きさの部屋ばかりだと変化がなくてつまりません(このプランはカタイなんて言います)。

もし、あなたが、家族にできるだけリビングルームで過ごしてほしいと思ったなら、大きさを変えることを検討しなければいけません。

適度な変化があれば、柔らかで軽やかな印象を与えることができるはずです。

さ、とりあえず変えてみましょう。





2017.04.25

楽勝の設計課題(β版)3.ツールを知ろう

3-1かたち


1) 住宅は最後はかたちです—かたちには意味や性格がある
住宅は幅・奥行き・高さがあります(当然!)。

計画は、最終的には立体的なかたちにまとめあげなければいけません。
そこで、あなたの思いをかたちにするためには、まずかたちの持つ意味や性格について知る必要があります(己を知り、敵を知れば、百戦危うからず)。

あなたがあるかたちを示した時、あなたに意図があってもなくても、見た人に対し、そのかたちはある意味や役割を付け加えたり、なにかしら印象を与えてしまいます。

そこで、あなたはこれらをできるだけ意識しながら操作する必要が生じます。しかし、偶然生まれた面白さも生かすよう、試してみましょう。

さ、かたちの効果を利用しましょう。





2)かたちのいろいろ
私たちのまわりいろいろなかたちがあります。
すべてについて言及することはできないので、ここでは2つのことについて解説します。

2)-1直線と曲線
住宅や大きな家具はたいてい直線でできています。
直線はシンプルですから住宅をつくったり、家具を置いたりするのに便利です。力強さも 持っています。しかし時には、退屈だったり窮屈な感じを与えることがあります(カクカクしているとか固いなんて言いますね)。

一方、自然界には直線はなく曲線があふれています。曲線は扱いづらいこともありますが、優美でやわらかな印象をもたらすことが多い。また、曲線は人を自然に導き入れるのにも有効に働きます。

いちがいに断定することはできませんが、直線は男性的、曲線は女性的と言っていいかもしれません。




2)-2幾何学的なかたちと有機的なかたち
先の直線と曲線の関係によく似ています。

幾何学的なかたちは合理性と法則性を感じさせます。力強さも持っています(男性的)。しかし、やっぱり退屈だったり固い感じを与えることがあります。一方、有機的なかたちは曲線と同様に、優美でやわらかな印象を与えます(女性的)。そして自然を感じさせたり、包み込まれたような気にさせます。

二つの異なった性格を知った上で組み合わせると、変化とおもしろさ、楽しさを生み出すことができます。同時に、いつも型どおりではつまらないこともあります。(かたちはやっぱり人間に似ている!?)。

さ、あなたがイメージした通りの効果にジャンプするために、何回も試しましょう。

cf. 偶然性



2017.04.25

楽勝の設計課題(β版)ストックを生かそう

2-5 一つの案に執着しない—多数の中から選び出そう


1)1) まずは、材料を眺めましょう
材料を目の前にして、何が思い浮かぶのか、出てくるか・・・。
しばらく眺めることから始めます。

そして、目についたもの何となく気になったものを取り出して、組み合わせてみましょう(これが編集するってことです)。材料は多ければ多い方がよい(多すぎると何を選んでいいか困ることもありますが、たぶんあなたは少なすぎて選べないのでは)。

ピンとくるまで、この組み合わせを試す作業を何回も繰り返します。

編集している中からアイデア(ひらめき・思いつき)が生まれます。材料やアイデアを何回も眺めたり検討することから、もう一つのアイデアがやってきます。そして、ストックし育てるためには、書き換えるスピードが大事です。遅いと、飽きて、集中力を欠いてしまうのです。

手持ちの材料がない時は、つくり出すしかありません。反省したり、判断することをいったんやめて、とりあえずは思いつきを何でも書き出しましょう。どうしても思いつかない場合は、「過去に頼る」です。雑誌や参考作品を見てみましょう。あとは、同じことをやるだけです。

はじめからいいアイデア、オリジナルなものを求めてはいけません。つきあっているうちに必ず、次第にあなたらしいいいものに育ちます。

さ、手持ちの材料を、目の前に並べることから始めましょう。



たくさんあるとよりいいものが選べるようになります。

2)一つに絞った後は
これと決めたら、じっくり育てます。

比較的早い時期に決めて、よりよくしていくことが秘訣。

小さなことでも、試してみることが大事です。それまでのストックが役に立ちます。

もしこれというストックがなければ、このときも過去に学びましょう(人に聞いたり、雑誌やインターネットで参考になるものを探せばよい)。それはそんなにむつかしいことではありません、なぜかって?

あなたは見つけられるべきもののイメージをすでに持っているはずなのです。

さ、小さな種を大きく育てましょう。


2017.04.23

楽勝の設計課題(β版)ストックを生かそう

2-4 頭を使うな—手と眼で考えよう


1)頭の中だけで考えるとどうなるか
あなたの頭の中には雑多なもの(材料)が詰まっています。

この中からどれとどれを使うかを選び出すことは、天才じゃない限り、簡単ではありません。ましてそれらをどんな風に組み合わせるのかを描くのは至難の業(僕自身、いつも感じていることです)。

たとえば、今日着ていく服を選ぶのさえ頭の中だけでそれをやると、迷ったり、混乱したりしがちです。 やっと決まって、いざ着てみるとちょっと変ということがよくあります。それが、直接洋服を眺めながらやるとスムーズです。

最初の材料はあれ。スクラップ帖です。

さ、スクラップ帖を手に取って、見直しましょう。



スクラップ帖をながめよう。 


2)手と目を使って考えよう
手と目で考えるなんて無理、と思いますか。

それでは、説明しましょう。

手持ちの材料を目の前に並べた(書き出した)ならば、次はそれを眺めながら、組み合わせ
を試すというだけのことです。そして、その中でよりよい案を選び出せばよい。足りなければ足しましょう。もしかしたら別のひらめきが生まれるかもしれません。そして、その時にはきっとあなたの頭も自然に働いているはずです。

大事なのは、何でもいいから、思いついたことを一つでも書いてみることです。考え込むよりまず書いてみる。そこからすべてが始まります。

さ、足すなり引くなり、思ったことを試しながら、それをさらに良くしてください。



アイデアを眼に見えるようにすると、さらにアイデアがわいてきます。      


2017.04.23

楽勝の設計課題(β版)ストックを生かそう

2-3 ことばかかたちか—コンセプト病にかかっていませんか


1)コンセプトってなに?役に立つの?
コンセプトという言葉が、実はガンなのかもしれません。

コンセプトという言葉はよく使われます。

デザイン・コンセプトという時の、今日のような使い方は、どうやら「広告で,既成概念にとらわれず,商品やサービスを新しい視点からとらえ,新しい意味づけを与えてそれを広告の主張とする考え方」*として使われたようです。 *大辞林

「新しさ」、「主張」、「考え方」と言うことが目につきますが、もう一つ、あらかじめ先に立てるべきものというとらえ方があるようです。

コンセプトには、何やら立派そうですが、いったん決めたらそれに従わざるを得ないというような不自由な響きがあります。

課題をやるあなたにとって、これは有効でしょうか。僕はNoと言いたいのです。



コンセプトに縛られないように、進めよう。 



2)コンセプトを忘れよう
まずは、ンコンセプトという言葉をひとまず忘れてしまいましょう。

あなたがなんとなく「こんなことがあったらいいな」、「これができたらいいな」ということで十分です。

それはひとつのことばでも、考えでも、かたちでも何でもいいのです。育てることが大切なのですから。育んでいるうちにそれは少しずつ変化していくはずです。設計は言葉にかたちを与える作業ではありません。逆のこともあるのが当然です。つまり、考えてからつくるだけでなく、つくりながら考えようというわけです。

あらかじめ決めておいてこれにしたがって作業を進める「コンセプト」は共同作業をうまく進めるために役立つ概念です。だから、自分自身でコントロールできる課題設計の場合は、「思いつき」くらいに考えて進めながら育てる、途中で変わっても良いつもりでやると良いと思います。

最終的なコンセプトは、もしかしたら、あなたがつくりながら育んだ結果(かたち)を説明するための道具(ことば)と言うほうがよいのかもしれません。

あ、発表用のコンセプトはね、課題ができあがった後に取り出せばよいのです。



頭だけではなかなかまとまらない。眼に見えるようにスると一目瞭然!      


2017.04.23

楽勝の設計課題(β版)ストックを生かそう

2-2 予条件を眺めようー蕎麦を求められているのにうどんじゃ困ります


1)予条件からイメージを引き出す
出題の意図を取り違えたら、たいていアウトです。

そばを食べたかったのに、うどんが出てきたら困ります。
何が求められているのかをしっかりと検討しましょう。そして、求められていることに応えるためにはどうしたらいいか。そのことにいつも思いをはせていると、そのうちにイメ−ジが出てきます。

それは、必ずしもひとつではないかもしれませんし、明確なものでもないかもしれません。とりあえずは、それでよい。どっちがいいとか何とか言うのはやめて、ひとまずそれらと少しつきあってみましょう(つまり、育てるわけです。はじめは、何がどう育つかはわかりません)。頃合いをみて一つに絞り込みましょう(面倒ならはじめから一つに決めてもかまいません)。

あなたは、もしかしたら、与えられた条件を制約と感じるかもしれません。しかし思い出してみてください。高校生の時に制服があったあなたはそのせいでいろいろと工夫をしたし、一方私服のあなたは毎日の服装計画が面倒だったということがあるのではないでしょうか。
考えようによっては、予条件はイメージを引き出すのにとても役に立ちます。

さ、制約をヒントに変えましょう。



下階の大きな開口部は、高台にある敷地という条件のため。 



2)ストックの中のイメージと予条件を近づける
与えられた条件は教室の全員にとって同じものではありません。

配られた資料は教室の全員にとって同じものですが、受け取り方もまったく同じというものでもありません。

予条件はあらゆることについて示されているわけではありませんし、解釈のしかたには幅があります。あるいは、自分がやりたいことに合わせて、もっと積極的にわざと誤解する(誤読)ということだって許されます。

蕎麦を頼んだのにうどんが出てきたら困りますが、細い麺でざる蕎麦のように見えてしかもそれがとてもうまいうどんならきっと満足するかもしれません(そっと言えば、出題者はいつも心のどこかで、予期せぬ回答/作品を期待しているのです)

さ、与えられた条件を積極的に読み解いて味方にしましょう。


蕎麦を頼んだはずなのに!      新しい蕎麦?


問題 壁を共有せよ。        一般的な解         積極的な違反


2017.04.23

楽勝の設計課題(β版)ストックを生かそう

2-1 最も大事なのはスケジュール !?


1)過去に学ぶ
締め切りがないと仕事をしない自分を知っています、ね。

そして、締め切り間際にはいつも、「もう少し時間があればなあ」と思うこともわかっています。きっと、「今度こそ・・・」と誓うことも。あなただけではありません。

毎度お馴染みのこうした思いをしないですむためには、何をすればいいのか。それは全然むづかしいことではありません。簡単なことです。何をいつまでにするか、自分で締め切りを設ければよいのです。後はやるだけ。

そして、これを守る。遅れたらすぐに取り戻すようにする。アイデアの良さよりも完成度 を高めるために、手順や日程を計画しましょう。

「もっとよいアイデアを」の気持ちは大切です。しかし、それをよりよい形にしてみせることがもっと大事です。

さ、あなたにあったスケジュールを立てましょう。



アイデアばかりに時間をかけていると、育てる時間が取れません。 



2)スケジュールのつくり方
無理な計画は禁物です。

立派すぎる計画(決めたとおりに進むことを前提にした計画のこと)は役に立ちません。

これまでの自分の経験を振り返るならば、ある作業を終えるのにどのくらいかかるかはだいたいわかるはず。そのことを踏まえて計画を立てましょう(試験勉強のことを思い出すといいかもしれません)。 

最終締め切りだけでなく、節目毎に自分で締め切り日を設定しておくことが重要です。

いつまでに何をする?それだけではなく、ある作業に取りかかる前に必ずすませていなければならないことがあります。

そして、いつも計画通りにいくと思ってはいけません。遅れを取り戻すための余裕を見込んでおくことも忘れないように。そして、折に触れスケジュールをチェックし、時には修正することも大切です。スケジュールは、常に目に見えるようにしておくことが肝心です。スケジュール管理は大事なデザインのひとつです。

このためにもうひとつ大事なことは、最終締め切りの前に自分自身で締め切りを設定しておくことです。どんなに計画しても必ず1日不足する、というマーフィの法則があります。 

さ、目の前に出しておきましょう。


2017.04.23

楽勝の設計課題(β版)アイデアを育てる

1-3 アイドルを探せ—育てるための種を探す方法


1)過去に学ぶ
ゼロからまったく新しく作り出すことがむづかしい。

そのことは前にも述べたとおりです。これはあなただけではありません。
誰にとっても同 じこと(実は、あなたの憧れのあのインテリアデザイナーや建築家だってそうだった)。

そこで、それではどうするかということについてのもう一つの方法です。
その答えは、「過去に学びなさい」(あのウィリアム・モリスも言っています*)。
すでにあるものから学ぶ、 あるいはまねすることから始めればよい。
そのためには、ちょっとした努力が必要です。
そう、探し出さなくてはいけません。

そのためには、街や本、雑誌、映画などをできるだけたくさん見なくては、見つけることはできません。

さ、何かひとつ発見するつもりで出かけましょう。


*慣習の型にはまった月並みな商業的物品を批判して、
「過度の慣習化を矯正するものは、
 第1には大自然のたゆみなき研究であり、
 第2には、それぞれの時代に人々が作り上げたものの研究である。
 第3の矯正薬は、もし諸君が持っているならば、それこそ絶対に信頼できるものなのだが(中略)それは想像力である」
 (1894:バーミンガム市立美術学校における講演)。

ついでにいえば、ボローニャのボローニャ産業博物館のセディオーリ館長は、こう言っています。
「困難にぶつかったら過去を勉強しなさい。未来は過去にあるからです。学校や博物館というのはそういうところなのです」。

見ることで種を仕入れ、話したり聞くことで育っていきます。



    見る                          話す                         聞く
    ・街や建物                       
    ・映画
    ・絵画
    ・本

気になったことはノートへ

レポートの場合は、それぞれの山が章や節になり、それぞれの紙が材料になるというわけです。


2)アイドルを探せ
何から始めたらいいかわからなくいあなたに、とっておきの方法を。

それは「アイドルを探せ」です。

アイドルはまねしたくなります(お気に入りのタレントの洋服の選び方やお化粧のしかたをお手本にするのと一緒です)。
アイドルがいれば、読むべき本や雑誌、見るべき建築や絵や美術等々を探し出す手間も省けます。
それに、アイドルは何人いたっていいのです。

あなたのアイドルをどんどんまねしてみましょう。

「オリジナリティが大事じゃないか!?」ですって。
大丈夫、心配無用です。
育てているうちに、自然とあなたらしさが出てきます。

さ、お気に入りを見つけましょう。




ひとりのアイドルから世界が広がります。

2017.03.29

楽勝の設計課題(β版)アイデアを育てる

1-2 育てることが大事です—小さな種を大きくすることを考えます


1)視覚化すること
人は目に見えることに対しては反応しやすいのです(テレビの方が小説よりも感想も言いやすいのと一緒です)。

先に述べたスクラップ帖も、そのための方法の一つです。
スクラップ帖にする前に、気づいたことを書き留めておくのも有効です。
書き付けるため のちいさな紙片を持ち歩くのが正解。この時のルールはたった一つ—1枚に1項目書く*。 
それだけです。*こざね法:梅棹忠夫「知的生産の技術」

これ(素材)がたまったら、その時々の視点で自分なりに分けてみる。
さらに、組み合わせを変えたりしながら(編集ですね)、思ったことを形に変える手助けにすればいいのです。
いうまでもなく、 全部使おうなどと思ってはいけません。あなたが必要だと思ったことを使えばよい。
これは、たとえばレポートを書く時にも効く方法です。

さ、紙片の束をつくりましょう。



    1項目/1枚                 ・その時の課題に沿って、関係のありそうな山を作る
                           ・山に名前(タイトル)をつける                                                    ・出てきたイメージを書き出す

課題毎のノートに移す

レポートの場合は、それぞれの山が章や節になり、それぞれの紙が材料になるというわけです。


2)蒔いた種を育てましょう
せっかく蒔いた種は、花を咲かせなければつまりません。

育て方によっては、たった一粒の種からきれいな花を咲かせることもできます。
思いつきには、水をやる代わりに何度も見返して、新しい思いつきを書き加えましょう。
この書き換えが水や肥料になります。

このときも「とりあえず書く」です。
じっくり考えた後のよい思いつきよりもこの繰り返しを何回もやることが効果的(実は、このテキストもそうしてできあがりました)。
そして、ある程度大きくなったら(変わってきたら)、
別のノートに書き写してやればいいのです(植え替えるのと同じです。課題毎に1冊)。

さ、書き加え、移し替えましょう。


見る、書く、移す

見て、気づいたことを書いて、イメージを課題のノートに定着します。

2017.03.29

楽勝の設計課題(β版)アイデアをストック

1-1 小さな種から始めます


1)あなたを助けるアイデアのスクラップ帖を作る
何事も、ゼロからは生まれない。
デザインの「素」になるものを集めること。

まずは、街を歩いて気になった建築をはじめとして、景色やものを写真に撮り、スクラップ帖に貼付けて、日付と簡単なメモをつける。

立派なものをつくろうとしてはいけません。とりあえずつくればいい。ゆっくり吟味するのは、その後。

同様に美術館へ行ったり、映画を見たり、本や雑誌を読んだりしながら気になったものや事柄、言葉についてもメモして貼付ける。
くれぐれもいいものをつくろうとしてはいけない。そして、これが習慣になったらしめたものです。

出かける時は、カメラとコンベックスを忘れずに。





2) アイデアのスクラップ帖の使い方
スクラップ帖は、折に触れて見返します。
何回も見返すことが肝心。

そして、思いついたことは、何でも忘れずに書き込みましょう(日付も忘れずに入れておきましょう)。
その時、思いついたことの良し悪しを判断しようとしてはいけません。

「まずは書け、そしてその後で考えろ」です。

何でも目に見えるように(視覚化)しておいて、その後で考えればいいのです。
課題に取り組む時は、とりあえずはこのスクラップ帖を開きます。何かアイデアの種や ヒントが見つかるはずです。

さ、開きましょう。


はじめは眺めるだけでOK

何度も眺めているうちに、インスピレーションがわいてくるはずです。

2017.03.29

楽勝の設計課題(β版)0. はじめに

むづかしく考えない

課題が出ると、たいていの人は何か立派なアイデア(コンセプト)を探そうとして、考え込んでしまう人が多いようです。
その結果、むづかしい、コンセプトが見つからないといいながらいつのまにか時間が過ぎてゆくという人が多い異様です。

あなたも、そういう一人ではありませんか。

でも大丈夫。

住宅の重要な役割のひとつは、時との暮らしの舞台、生活の器です。
そして、暮らしや生活は、皆さんが日々行っていることです。

だから、こんなふうに暮らしたい(生活してもらいたい)ことから出発して、
このためにはどんな空間がふさわしいか思い描けば良い。むづかしく考える必要張りません。

はじめから立派な結果を求めずに、まずは思い浮かべたことを書き留めて、
それを少しずつ良くしていけば、きっと良い結果が得られるはずなのです。

さ、手を動かすことから始めましょう。

本テキストの構成
このテキストは、主に次の3つからできています。

1.取り組み方編
2.手法編
3.実践編
  
時間がある時ははじめから読むのがいいのですが、急いでいる時は必要に応じて、2や3から読んでもかまいません。
ヒントになりそうなところからはじめてください。
決まった読み方はありません。

そして、自分で気づいたことはどんどん書き加えてください。
このテキストも、自分の使いやすいように、変えていけばよいのです。

そして、もうひとつ。
ここで身に付けたことは、演習課題の他にもさまざまな場面で役に立つはずです。
  
さ、今すぐ読んで、自分にとって役に立つように育ててください。


2017.03.29

楽勝の設計課題(β版)番外編 思いの強さ

あなたのデザインがだめなわけ

先日学生と彼や彼女が提出したものについて話していて、「なぜ、自分の作品をもっとよくしたいと思わないのか」、「なぜ、その努力を惜しむのだろうか」と思わされる出来事が連続してありました。出来に満足しているからというのではなく、一様にこれ以上はめんどくさいために「これでいい」というのです(さすがにはっきり口にする人は少ないけれど)。

そして、3年生の提出作品を見た翌日、スヤマクンが訪ねてきてくれたので、一緒に卒業設計の作品を見ることにしたのだけれど、彼の感想はといえば、あんまり芳しいものではなかった。よくできたものが多いようだけれどと褒めたあと、「自分で考えようとした感が乏しい」(ということは、言われるがままにやったように見えるということ)、「負けたくないという気持ちが感じられない」と言うのです。ま、先の僕の抱いた感想と似たようなものですね(ちょっとスヤマクンを道連れにするようで悪いけれど)。


出番を待つ模型

一昨日の合同講評会でも、同じ気持ちを抱いたのでした。誰かに従ってできた破綻のない計画より、多少の欠点があってもエネルギーを注いで作り上げたことが感じられる案に肩入れしたいのです。

だからもう一度、書いておこう。

自分が思い描いたことを実現できるかどうかは、作品に注ぐ「思い」の強さにかかっている。当然これがあれば、作品をよくしたいという気持ちが働く。

これまで学生を見てきて、世界でただひとりしかいないほどのずば抜けた能力というような特別な場合を除けば(つまり、例外中の例外、まずいないということ)、才能の有無というよりもそこに飛び込む「勇気」こそが大事な気がするのです。たとえば『論語』にある「子曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」、すなわち「好きこそものの上手なれ」ということです。

とすれば、あんまり考え込むよりも自身の「思い」や「願い」に賭けることができるかどうかが分かれ目となる( もちろん、このことが一方で自身を甘やかす方に働くこともあるし、「下手の横好き」ということもあるけれど、どちらがわれわれを励ますかということになると自ずと明らか)。卒業設計や演習課題でも、結局はこの「好き」すなわち「思い」の強さが感じられるほどやっぱり印象がいいように思うのです。

「省エネ」や「安心」、「安定」を求めたがるのはしかたがないとしても、少なくとも見かけ上の効率主義に陥ることだけは避けてほしいのです(勉学も仕事も生活もです)。

話がそれるけれど、たとえば、わが国の多くの鉄道駅や空港の空間のつまらなさ、高揚感の欠如はほとんどこのこと(すなわち、経済効率最優先)に起因しているのではあるまいか。

もしかしたら、あなたのエスキスが進まなかったり、作品が残念な結果に終るのも案外このせいかもしれません( 惜しいなあ 。でも、何を隠そう、僕自身があなたと同類だから言うのです)。

2017.01.27

楽勝の設計課題(β版)エレベーション

4-7 エレべーションのつくり方


1) エレべーションって何?
立面または立面図のことです。

住宅を側面から見た時の見え方を決める立面計画のことについて考えます。そのうち特に正面から見た姿をファサードと言います。

住宅は人と同じように中身が大事なのは言うまでもないことですが、どう見えるかも同じように重要です。たとえるならば、プランやセクションが人格だとすれば、エレベーションは人が着る洋服や女性のお化粧のようなものと言えるかもしれません。

特に人目に触れるファサードは自分だけのものでなく、半分は地域の人々や道を歩く人たちのものでもあると考える方がよさそうです(よく言われる「敷地周辺の文脈に沿う」というのもこのことを含んでいるはずです)。

もちろんエレベーションがプランやセクションと無関係につくられるわけではありません。たとえばエレベーションでよいと思ったことがプランと合わないことがでてくるかもしれません。その時はどちらを取るか、あるいは第3の道を探るか再検討しなければなりません。したがって、この3つを行き来しながら検討し、計画を進めることが大事。

以下に示した例は、前回と同じくas house* です。 *設計:横山敦士、2004年、横浜市


 as house  北側立面 

広い法面を持った高台に建つこと、正方形に近い平面を持つ形状をしていることの他、第2リビングの横長の窓、第1リビングの天井と床とテラスの水平の線を強調するためには、屋根(正確には屋根を包む壁の上辺)も水平でなければならなかった(と思うのです)。街の灯り(照明器具)としての役割も果たしています。

 北側立面図

さて、あなたどんな洋服を着せるのでしょうか。

2)エレベーションのつくり方
 だいたいのプランやセクションができたなら、これを元に立面を描いてみます。
 それから、以下のことを中心に検討しながら(プランとセクションとの行き来を繰り返しながら)決定していきます。

  ①周囲の景観との関係
   まず第一に、その形態(切り妻か陸屋根か、あるいはボールトか)と仕上げの材料(塗り壁か木材かコンクリートか)で、周囲に合わせるの
   か、離れるのか。
   サイトプランとも大きく関わります。
  ②プライバシーとコミュニケーション
   窓の位置や大きさが大きく関わります。
  ③街の照明装置
   窓と言えば、住宅の窓からこぼれる灯りは干とん気持ちを和らげます。住宅が街の照明器具として役割も果たせば、街はもっと快適な空間にな
   るのではないでしょうか。
  ④構造
   柱と梁による軸組構造は開口部を大きく取ることができますが、レンガやブロックによる壁構造(組積造)は大きな窓を取ることはできませ
   ん。
   一方、コンクリートによる壁構造は比較的自由です。

 どんな屋根にするかで、印象は違います。

もっと具体的な方法。次の2つのやり方を覚えておきましょう。プランの時と同じです。

  ①一つは窓をあけるやり方。だんだん開放していく
   住宅の外周が全部壁だとしてそこに窓を開けましょう。こちらは景色が良いので大きな 窓をとか、こちらは隣の窓も近いしプライバシーを考
   えて小さな窓にしよう、こんな感じで壁に窓を開けて行きます。大きさだけでなく、かたちも考えると楽しくなるはずです。
  ②もう一つは壁で塞ぐやり方。だんだん閉鎖していく
   外周が、例えばP・ジョンソンの「ガラスの家」みたいに、全部ガラスだとして考えはじめるやり方です。全部ガラスでもいいんだと言う人も
   いるかも知れないけど、あまり現実的ではないようです。ここはお風呂だから壁にしましょうとか、いやいやお風呂だからこそガラスが良いよ
   ねとか、あいだを採って半透明の素材の壁にするとか、まわりの環境を壁に反映させていくといいよねとか。
   窓はファサードを決める大事な要素だけど、景色のための窓でも内側から外が見えると言うことは、外からも内側が見えると言うことでもある
   のです。


 うがつか、塞ぐか。

さ、立場を変えて、あなたの計画を見直してみましょう。

2016.07.02

楽勝の設計課題(β版)連載開始

4-6 セクションのつくり方


インターネット版「楽勝の課題設計」を始めるに際して、内容の紹介を兼ねて「プランの簡単な育て方」から始めました。今回からははじめから順番に、と思っていたのですが、そろそろプランから断面や立面の計画を考える頃だから、これに合わせる方がよいと思い直しました。

で、大急ぎで準備したセクションの作り方です。

1) セクションって何?

断面や断面図のことですが、ここでは断面計画として考えることにしましょう。

断面計画というのは、住宅全体や部屋の高さや上層階と下層階のつながり方、窓の高さ、それに屋根の掛け方等を決めることをいいます。住宅の高さに関することを決める計画ですから、光の取り入れ方や空間の変化や楽しさを与えるのにも大きく影響します。

平面計画が主に生活のしかたに関係するとすれば、断面計画は空間の喜びに関わるといってよいと思います。

以下に示す例は、as house* です。 *設計:横山敦士、2004年、横浜市

 as house  外観 

 リビングルーム1
リビングルーム1は室内と同じ素材でつくられた外のテラスと床から天井まで大きく取られた開口部のおかげで、内と外の境界が消えてまるで外のような部屋のようです。また床は中空に浮いているようにも見えます。

 リビングルーム2
こちらは帯状の細長い窓とすることで、外の建物は視界に入れずに空の眺めと光を楽しむことを目指しているようです。

 断面図
傾斜地に建っていることやリビングルーム1とテラスが同じ高さでつくられていることがよくわかります。真っ直ぐな階段で結ばれたリビングルーム2との性格の違いも。

2)断面計画のつくり方
 だいたいのプランができたなら*、高さに関わるそれらのつながり方や光・眺望の取り入れ方などを検討します。

 *本来、プラン、セクションそしてエレベーションは相互に関連するものだから同時に考えるのがいいのです。しかし、経験が乏しいとなかなかそ
  うはいきません。

 その時の手法には、次のようなものがあります。
  ①段差
   段差を設けることで空間の分節と連続性を得ることができる。ただし、つまづいたりする危険もあるので、むやみに段差を付けないほうがよい
   のはいうまでもありません。

 段差を付けるだけで、異なる2つの空間が生まれます。


  ②吹き抜け
   上下階に仕切りがなく、連続している部分のことです。たとえば、次のような効果が得られます。
   ・ 空間の広がりや変化
   ・ スカイライトやハイサイドライトとの併用による採光
   ・ 空間の連続性は人と人を結びつける

 スカイライト(天窓)と併せて用いられることが多い。

さあ、あなたは、どんな効果を生み出したいのでしょう?


  ③ 窓
    窓は、どこにつけるかによって効果が変わります。
    スカイライト(天窓)、やハイサイドライトのほか腰窓でも高さによって、以下のような効果を得ることができます。
    ・ 光が届かないところへの採光
    ・ 時間の視覚化
    ・ 降り注ぐ光による劇的な効果
    ・ 視界のコントロール
    その他の窓にも、人やものの出入りをコントロールしたり、風や景色を取り込んだり、ゴミを掃き出したりと様々な機能があります。

 窓の位置(高さ)
それぞれ、機能や光の入り方、外の眺めが異なります。


  ④ スキップフロア
    床の高さを1階分ではなく半階分くらいずつずらした構成で、本来は傾斜地で用いられる手法です。以下のような効果があります。
    ・ 床のレベル差が小さいので、上下の移動が楽
    ・ 床のレベル差で空間を分節することによる連続性や広がり
    ・ 空間の変化の獲得
    ・ 地盤面の加工を少なくする




  ⑤ 階段
    皆が苦戦するものの一つです。むづかしいけれど、簡単に考えることにしましょう。
    ・ まっすぐ上るか,途中で曲がるか。基本のかたちはこの2つ
    ・ 階段の上は吹き抜けが原則
    ・ 上りはじめと上がりきったところには人が立つスペースが必要(壁芯寸法で約900角)
    ・ 踏面は227.5*,蹴上げが225*(住宅では、踏面150以上、蹴上げが230以下が最低条件)
    これで、階高3,000の場合、段板は14枚、この部分の長さは3,150となります。後はこのバリエーション。
    階段は上下階を繋ぐというだけでなく、腰掛けたり、寛いだりするバトするともっと面白い場になると思います。
    *910をモデュール寸法としたときに、4分割したもの。

 階段は劇的な効果を演出することも。

 階段の基本的なタイプは真っ直ぐ上るか、曲がるかの2つ。


さ、楽しい空間を作り出しましょう。ただし、基本はシンプルに行こうです。

2016.06.28

楽勝の設計課題(β版)連載開始

インターネット版の掲載に際して


設計演習で課題が出るたびに、
難しい…、
アイデアが…、
コンセプトが…、
とつぶやきながら、なかなか手が動かないことはありませんか。

そんなことはない、と言い切ることのできる人は幸福な人です。そういう人には関係ありません。
これから掲載していこうとするものは、「そうなんです」とそっとうなだれるあなたのために書きかけていたものなのです。

白状すれば、ずっと前から書きはじめていて、いろいろな事情で先延ばしになっていたもの。
このままではらちがあかないので、今すぐにできることから始めて、不足のものは後から補うことにしようと思い至ったのでした(これが簡単にできるのはインターネットの強み、のはず)。

これから紹介するやり方は、教師として見てきて気づいたことで、日常的に、実現することを念頭に設計を行っている建築家の見方とは違うことがあると思います。でもそれは当たり前だし、むしろよい面もあると思うのです。

学生諸君が建築家と同じやり方をしても、彼らが作り上げた以上のものを生み出すのはきわめてむづかしいのではあるまいか。むしろ従来のやり方や実社会の束縛、枠組みからいったん自由になって考える、すなわち、知らないからこそできることを生かす方が新しい見方を生むのではないかと思うのです。

何より、むづかしいと言い続けるよりも、一刻も早く思い描く楽しさとつくりだす喜びを味わってもらいたいと願うのです。
気づいたことがあれば、どんどん知らせてください。改善して行きます。


で、たとえば、こんなふうに。

「楽勝の設計課題 Ⅲ.実践編−さ、始めましょう」 4.さ、はじめましょう、4-5プランの作り方の部分です。

3)プランの簡単な育て方
自分でつくるのがむづかしければ、まずは自分の気に入ったプランや予条件にあうプランを借りてきて、これを与えられた条件に合わせながら、自分だったらこうしたいと思ったように変えていけばよいのです。
だいたいの間取りがきまったら、そこでの生活を想像しながら育てましょう。

まず第1にあなたの思ったとおりの生活ができるかどうかを検討します*。
不足のものは足して(たとえば広さや開口部)、余計なもの(たとえば、壁)を外しましょう。
 *あなたが描いた暮らしのストーリーに従って、朝起きてから夜寝るまでの生活を紙の上や模型の中で想像(シミュレート)してみるということ。

つぎに、アイストップやら、眺望やら、「こうすればもっとよくなる」何かを見つけだしましょう。肝心なのは、そのつもりになって検討すること、そして何度も試すことです(このことは僕自身が身を以て経験してきたことです。)。今日うまく行ったと思っても、明日見ると「あれっ」と思うかも知れません。でも、少しずつかもしれませんが、確実に良くなっているはずです(と信じて続けましょう)。

さ、もっとあなたらしいプランに育てましょう。

以下に示す例は、2・3年生の演習で教わるヨコヤマセンセイの”is house”(実際に見せてもらいましたが、とても素敵な家です。そして、彼はこのテキストについても助けてくれました)をもとにして、2人暮らしの住宅を3人用に大急ぎでつくり変えてみたものです。
ほんとうは予条件(敷地や居住者やら)が大事。だから、出来の善し悪しは別です。あくまで、最初の一歩、たとえばこんなふうにということで…。


is house  ←バスルーム ↓2階のリビングルーム




もしかしたら、まじめなあなたは、能力のある建築家が考え抜いた住宅に手を入れるなんておこがましいと思って、できるだけそのまま使おうとするかもしれません。でも心配無用。そのことはいったん忘れましょう。
「ありがとう」という気持ちがあれば、引用された設計者もむしろ喜んでくれるはずです。

プロポーションやかたちも、どんどんあなたらしく変えてみてください。

2016.06.23

マンション改装記 ― 渋谷某マンションの1室での一日 ―


今回は渋谷のマンションの一室の改装です。小さな仕事だけれど、久々でとてもうれしいです(もっと仕事が欲しい!)。辻堂の時と違って、はじめての打ち合わせから完成までは約3ヶ月。のんびり進めたので、クライアントと設計者、工務店の3者が実際に契約してからはほぼ1ヶ月ちょっとという感じです。家具工事が主だったので、現場はだいたい1日で完了。そこで、今回はいきなりの完結編です。

12月16日 快晴。家具屋さん、電気屋さんが入っていよいよ現場での工事です。いくらかの修正を要する不具合が残ったけれど、ほぼ完成しました。とりあえず、完成写真と工事の様子をすこし公開しましょう。

改装後


写真1リビングルームへの入り口をみたところ

玄関ホールからリビングルームへ入って右側のところに棚を造り付けました。テレビやオーディオ類を収容します。今回のクライアントはできるだけものをおかない生活をしたいということです。椅子は、予備用のアアルトのスツール。


写真2テーブル

テーブルと間接照明をデザインしました。テーブルは読みかけの雑誌等が収納できます。材料は無垢のタモです。無垢材は高いし重いけれど、やっぱりいいです。塗料も塗膜を作らないタイプを使用して風合いを活かすようにしました。椅子はクライアントのお気に入り、ヤコブセンのセブンチェアです。ペンダントはルイス・ポールセンですが、コードが短か過ぎたので、取り換えます


写真3入り口から続く棚です

入り口から続く棚は、真ん中に32インチくらいの液晶テレビが入ります。底板はスライド式で引き出せるようになっています。上の照明器具は、予算の関係で球を白熱灯色に換えただけですが、それでもずいぶん違う。テーブルスタンドは石井幹子デザインのもの。


写真4間接照明とフロアスタンド

間接照明の下にはダウンライトとピクチャレールが仕込んであります。フロアスタンドはスペイン製のものですが、バランサーが着いていて簡単に高さを変えられるスグレモノ。ソファはもともとあったソファベッドです。しばらくは、カバリングでしのぐ予定。


写真5外は新宿や池袋の高層ビル群

窓の外には、新宿や池袋の高層ビル群が見えます。夜景はもっと素晴らしい(近々中に撮影敢行予定です)。クライアントは夜景を見ながら、気持ちよくお酒を飲めるようにするために、インテリアをやり替えようと決心したらしいです(!?)。満足してくれたでしょうか。

改装後


写真6なんにもありません

リビングルームは約14畳ということでしたが、ほとんど何もありませんでした。天井の蛍光灯は大きくて、しらじらと光っていました。壁は薄いグレー、床は床暖房用とおぼしきフローリングです(これらはいじれなかった)。


写真7間に合わせの家具です

実は、ここには間に合わせの家具が3つありました。テレビをおくスチルパイプの棚と小さなテーブル、そしてソファベッドです。食事も満足にできずにつらかったそうです(お待たせしました)。御位牌もちゃんとした居場所を見つけることができます(よかった)。


写真8台所

食堂やリビングルームから台所が丸見えでした。奥様はとても気になったそうです。僕もほかにも気になるところがあったので、少し大掛かりな改装案をつくってみたのですが、いろいろな都合ではじめの写真のようにロールスクリーンで済ませました。それでも、使ってみるととてもよかったそうです。

写真9まぼろしの模型写真

ここには模型写真を載せるつもりでした。ところが白模型だったり、壁で囲まれていたりしてうまく撮れないので断念しました(やれやれ) 。うまくつくってくれていたのにね。このときまで、入って左側の壁にも棚がありました。

第10回

8月10日 曇り。この日もとても涼しかった。このところ涼しい日が続きますね。関西はとても暑かったのに。風邪など引かないように気をつけて下さい。また、早く出かけたために、すいすいと行くことができました。来週半ばからは、大工さんたちも御盆休みに入ります。このあと16・22日に出かけました。いくつか不具合が見つかったために、ジョームにやり替えを申し入れました(ま、こんなこともあります)。22日の朝は台風のせいで雨風がすごかったのですが、午後からはおさまって、現場にはたいして影響がなかったのは何よりでした。屋根、窓がすんでいたのが幸いでした。天窓が飛んだために、雨が降り込んでたいへんなめにあったというおそろしい話も聞いたことがあります。


写真1下屋の部分のトップライト

今回の住宅では、トップライトが4ヶ所あります。天窓の威力はたいしたもので、予想以上に明るさを確保できそうです。設計したわたしたちも建て主もあらためて感心しました。壁が仕上がるならば、もっと明るくなるはずです。ところで、この天窓にいささか問題が生じました。機能上は問題ないのですが、色その他の問題があって、やり替えることになりました(作業員の皆様、よろしくお願いしますね)。


写真21階の天井裏の配管・配線

洗面所・納戸の天井裏の配管・配線スペースの状態です。排気ダクトや排水管・電線等が何本もみえて、おどろきます(それだけ、最近の住宅の設備が充実してきたということですね)。もちろん、最終的には天井が張られて、これらは目に入ることはないのですが。

第9回

7月28日 曇り。この日はとても涼しかった。また、時間も早かったこともあってか、道は空いていて、浜辺にサーファらしき姿がちらほら見える程度。海辺の景色はまるで晩秋か早春のようでした。おかげで、こちらとしてはとても快適だったのですが、せっかくの休みを楽しみにしていた人には気の毒な日でした。ま、こんな日もある。14日も21日も良い天気だったものね。前回から大分あきましたが、現場にいかなかったわけではありません。ただ、ちょっと忙しかったのです。


写真1充填式の断熱材吹き付けているところ

今回の住宅では、グラスウールではなくて、充填式の断熱材を使っているのですが、その吹き付けの様子です。湿気を含みませんから内部結露の心配がないのです。2種類の液体を吹き付けると一瞬の内に100倍に膨れ上がります。ただ、同時に120℃になるということだし、おまけに風をさけるためにビニルで養生しているから暑いの何の、まるで蒸しぶろです(作業員の皆様、御苦労さまでした)。


写真2浴そうの給湯・給水用の配管

浴室の床にはモルタルが塗られていました、また、配管・配線もあらかた終わっていますが、これは浴そう用の給湯・給水用の配管です。ユニットバスではなく、ちょっとリッチなお風呂です。

第8回

7月7日 曇り。天気予報が雨ということだったので心配だったのですが、時折り陽も差すくらいのお天気で良かった。でも、おり姫とひこ星は会えないかも。サーファーも前回よりは多かったのですが、遠くからみているとペンギンのようでした(といって、そんなにたくさんの本物のペンギンをみたことはありません)。おまけに道も空いていて、ラッキーでした(行きも帰りも)。
ところで、チープシックな家の設計の仕事がこないかなあ。ま、待てば海路の日和ありといことで、ゆっくり待つことにしよう。まだ、現場も終わってないことだしね。


写真1屋根材のガルバリウム鋼板を加工しているところ

今日は、めずらしく大工さんたちがお休みで、現場にはガルバリウム鋼板の立はぜの部分をまげ加工している職人さん(マツモトさんです)が一人だけでした。0.4ミリはしっかりしていいねえ、とうれしそうにいいながら、でもマメができるんだよと軍手を外して見せてくれました。塩害にも強くて、15年前にやったのがびくともしていないということで、心強く思いましたした(当然、そのためもあってこの材虜を選んでいるわけなんだけれどね)。


写真2屋根材を貼っているところ

マツモトさんが、加工したガルバリウム鋼板を取り付けていきます。立はぜの部分に足が乗っているように見えたのですが、びくともしません。やっぱり強いのですね。このあとジョームもあらわれて休憩の時にいろいろおもしろい話を聞かせてもらいました(職人さんの話を聞いていると現場は楽しいなあと思います、どんな話だったかは、また後でね)。

第7回

6月30日 小雨。いつも現場には、鎌倉から海沿いを通って行くのですが、灰色の海と雲の境がわからないほどでした。サーファの姿もまばら。にもかかわらず、ひどい渋滞でした。途中、業を煮やした車が何台もUターンしていきます。おかげで、普通より2倍以上もかかって現場に到着しました。でも渋滞っていうのは、いつの間にかうそみたいにさっぱりと消えてなくなってしまうのはどうしてだろう。しかし、帰りは、反対に込むはずがすいすいと進むことができました。不思議ですね。
ところで、由比ヶ浜から稲村ケ崎にかけては、海の家がつくられつつあります(なんたって、もう夏だものね。はやいなあ。こわい、こわい)。中には、みかけはチープだけど、気持ち良さそうなのもあります。もしかしたら、住宅だってそれでもいいのかも、と思ったりしました。徹底的にローコストにこだわって、ちょっとチープシックな家を計画してみたくなりますね。ま、建築というよりは工作物に近くなるかもしれないけれど。


写真1小屋裏の小窓をみたところ

壁の下地材が貼られ、サッシも取り付けられはじめました。小屋裏の小窓はもともと三角の窓がつくはずだったのが都合により四角の窓2つに変更しなければならなくなったのですが、ま、これでもいいかなという感じがしました(ほっとしたのですが、取り換えなければならない事情が発生しました。やれやれ)。また、よく見えないけれど、主要な屋根にはすでにガルバリウム鋼板が貼られています(手前のカーポートの部分は、まだです)。


写真2お風呂場とバスコートのコンクリート壁の立ち上がり

今回の住宅には、お風呂場に隣接して、バスコートがあります。その境の壁の部分ですが、内部はまだこんな感じです。コンクリートと木を組み合わせる場合、コンクリート打ちの精度が問題ですが、これがなかなか難しいのです。その誤差によって、解決法を考え、スケッチを起こして施工者に渡さなければなりません。

第6回

6月22・23日 曇り。なかなかからっと晴れません。ま、梅雨だからね。見た目があまり変わらなかったり、風邪でダウンしたりということで、報告は2週間ぶりです。今回は、一緒に設計をしているマツウラくんが、はるばる大阪からやって来ました。建築だけでなく、設備の人も交えて相談しました。いくら詳細に図面をかいても、わからないところがでてくるのですね。


写真12階床の下地材が貼られたところ

2階の床にも下地材が貼られました。だいぶ家らしい感じがします。床に座ったり、立ったりしながら外を見ていると、だいたいの感じがわかります。気持ちのいい家になりそうです。整然とした木造の軸組はきれいで、どちらからともなく、天井は貼りたくないねという言葉が出てきました(でも、断熱のことを考えると、そうもいかないものなあ)。


写真2金物が組みつけられているところ

昨年の法改正で、木造住宅に使われる金物が増えました。まあ強度は上がるだろうから安心といえば安心なのですが、従来の伝統工法が持っていた技術がこれでまた失われることになるのではないかとも思ったりして、ちょっと複雑な気持ちになりました。大工さんたちはどう思っているのでしょうね。

第5回

6月9日 薄曇り。屋根の下地材が貼られました。でも、たった2人の大工さんの力で、どんどんでき上がっていくのはすごいですね。


写真1屋根や壁の下地材が貼られたところ

屋根や壁に下地材が貼られました。これで雨の影響が少なくなり、大工さんたちはしごとがしやすくなります。それにしても、整然とした木造の軸組はきれいですね(隠してしまうのが惜しいくらいです)。

第4回

6月2日 曇り、時々日差しあり。相変わらず、天気に恵まれません。今回は、報告はなしです。

第3回

5月26日 曇り。このところ天気に恵まれません、工期に悪影響が出ないかと心配です。今日は、ジョームの他に、棟梁のアベさん、鉄骨のミヤモトさんと打ち合わせをしました(いくら詳細な図面をかいても、うまくつくってもらわないと意味がないからね。そこで、念入りに確認をするわけです)。
先日の上棟式は、あいにくの小雨まじりでしたしたが、施主のご家族をはじめとして、さまざまな職種の職人さんたちが大勢集まって、お祈りし、お祝いのテーブルを囲んで、力を合わせて良い家をつくろうという気持ちを高めました。


写真1なにやらあやしい人がいました

現場に着くと、棟梁ともう一人の大工さんのイシカワさんがカンナをかけたり、釘を打ったりしていました。いっぽう、どこからかぶーんという音が聞こえています。何だろうと思って辺りを見回すともう一人ヘルメットをかぶりながら向こう側を向いたまま立ってなにやらしている、あやしげな人がいました。しばらくみていると、掃除していたのでした(ぶーんという音は、掃除機の音だった)。こちらに気づいたらしく、あやしい人がやってきました(どきどき)。ヘルメットを脱ぐと、何とジョームでした(おどかすなよ)。でもえらいですね。ちゃんとした仕事をしようと思うと、まず仕事場をきれいにしなければいけません(製図台と同じ)。ここでも、みんなが協力しているわけです。


写真2軸組が組み上がったところ

柱や梁の軸組が完成し、ほぼ建物の形態が姿を現しました。高いところで(しかも少し雨も降っていました)きびきびと働く鳶の職人さんたちはすごいですね。サイトウさんは若いのに何でもできるし(それによく知っている)、スズキ社長は、ちょっとシブくてかっこいいです。これからはいよいよ大工さんたちの本番となります(アベ棟梁をはじめとするみなさん、よろしくお願いします)。


写真3上棟式のお供えです

このようなものをお供えして、神さまにことの成就をお祈りするわけです。そして、お塩とお神酒で四隅を清めます。この後、みんなでお祝いの食事をしますが、最後にスズキ社長のきやりのあと、三本締めでおしまいです。こうして、みんなの力をひとつにまとめあげるのですね。

第2回

5月19日 晴れ。現場に到着すると、職人さんが一人だけぽつんと座っていました。今日は作業はないはずなのに思っていたら、じょーむが現れて(定例の打ち合わせのためです)、火曜の棟上げのための足場を組むということでした。月曜の予定だったのですが、もし手間取ったらいけないということで、今日からやることにしたということでした。いよいよ火曜は上棟式です。柱・梁など軸組が姿を現します。天気がどうかなあ。


写真1土台が組み上がったところ

コンクリートの部分が完成し、土台が据え付けられています。ここに柱や大引き等が固定されます。基礎と土台の間にはスぺーサー(キソパッキン)が挟み込まれていて、このため、土台をはじめとする木部が常に乾燥し、腐る心配がありません。

第1回

5月12日 晴れ。久しぶりの晴天でした。現場に入るときは、今日はどうなっているのだろう、問題が起きていないだろうかというような思いがよぎります(いつもうまく行くわけじゃないからね)。


写真1道路側から見たところ

道路側の壁は一部RC造としているのですが、コンクリートを打つための型枠が組み上げられています。これがどのくらいの精度ででき上がるかで、住宅の印象が変わってしまいますので、職人さんたちも気を使います(そうですよね、サイトウさん)。


写真2型枠の内部を見たところ

鉄筋がきれいに組み上げられています。鉄筋同士や鉄筋と型枠の間隔を保持するためのセパレータも入っています。ここにコンクリートを流し込んで、固めるわけですね。この位置によっても印象がずいぶん違ってきます。


写真3休憩に入つたところです

職人さんたちは、だいたい10時と3時に休憩します。しかし、休憩中でも打ち合わせをしたりします。ほんとうに働き者の人たちです。立っている3人の真ん中の人が現場監督のマツナガさんです。職人さんは彼(通称じょーむ)の指示にしたがいます。なお、四角い箱状のものは、バルコニーを支える柱の基礎をつくるための型枠です。

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